• "Subtle Vertigo"

    Scott Gilmore

    2017.06.12

    Country:Spain

    Format:LP / CD

    Year:2017

    Label:International Feel


    6月下旬に〈International Feel〉からリリースされるScott GilmoreのSubtle Vertigoというタイトルの日本盤に付属するライナーノーツを書きました。せっかくなのでレーベル側に怒られない程度に抜粋掲載します。何卒ご贔屓にお願いいたします。

    以下Scott Gilmore – Subtle Vertigo 〈International Feel〉ライナーノーツより抜粋

    はじめに、この作品のライナーノーツの依頼が来たときに受けるか受けまいかすごく迷った。というのは作品の詳細情報が、本作品のリリース元〈インターナショナル・フィール〉のボスであるマーク・バロットが発掘してきたUS西海岸を活動の拠点とするスコット・ギルモアという音楽家によるものということくらいしかなくて、アーティストのバックグラウンドや関連のあるレーベルなどにスポットを当てて作品の深部を照らすことができない、このコメント泣かせな作品を果たしてちゃんと語りきれるのかどうか心配だったからだ。 

    とはいえ、依頼が来たということにありがたみを感じて、ディストリビューターから送られた本作品のプレヴューを拝聴してみた。2017年現在、隆盛を誇るバレアリックシーンの羅針盤ともいえる名門〈インターナショナル・フィール〉が発表する新作ともあれば悪いわけはないが、(情報がなかったことが逆によかったのかもしれない)アルバムを通して26分のささやかで豊かな旅情に身を任せると、本作品を語るに十分な魅力や使命感みたいなものを感じた、とは格好よく言い過ぎ、要は俗っぽく単純にオタク心に萌えるような作品だったから依頼を受けるに至ったので、まがりなりにもDJ的な視点で自分の持つ音楽のアーカイブと照らし合わせながらこの作品を紐解いてゆこうと思う。

    その旅情の入り口にして、オープニングトラック”E70 No. 01″。針を落として10秒で心を奪う完璧なイントロダクションは、時期が来ると一斉に咲き誇って散ってゆく花のように儚く可憐で、クリアトーンの哀愁旋律とシンセパッドがオーロラのように重なるハーモニーが、80年代のジャパニーズ・フュージョン・シーンきってのギタリスト鳥山雄司の傑作バレアリック・フュージョン”Bay/Sky Provincetown 1977″のような、打ち込みと上音の狭間をふわふわと浮遊する感覚を味わせてくれる。正直に言えば、このイントロだけでも、ライナーノーツの依頼を受けるに足りる魅力を持っていた。

    -中略-

    全編を通して、エフェクティブなギターサウンドと自作のシンセサイザーを軸とした、とてもシンプルな宅録的オーケストラによって奏でられた本作であるが、それゆえに雄弁な映像喚起性は古いロマンス映画のようにセピア色で、聴くものをその甘露なシーンへと捉えて離さない。近年、アムステルダムの名門〈ミュージック・フロム・メモリー〉や、世界屈指のヴァイナル・ディガー、バッソが主催する〈グローイング・ビン〉などの目利きレーベルによる名作復刻ムーブメントで注目を集めるニューエイジな感覚と、ブライアン・イーノからセルジュ・ゲンスブールなどの先人たちが示した偉大なアンビエント性、そして〈インターナショナル・フィール〉がこれまで築いてきた現代的なバレアリック要素が絶妙に溶け合いながらも、いわゆるメインストリームのエレクトリックミュージックシーンとは無縁の世界に住む一人の無名のアーティストだからこそ作り得ることのできた、西海岸のビーチサイドが生んだロックやポップをルーツとするハイブリッドなチルアウト作品である。



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